相続税はすべてのケースで発生するわけではなく、特定の条件下では非課税となる場合があります。
1. 配偶者控除の適用
配偶者は相続財産の1億6,000万円または法定相続分のいずれか高い方まで非課税となる特例があります。
2. 基礎控除内に収まる場合
先述の基礎控除額(3,000万円 + 600万円×法定相続人の数)を下回る場合は、相続税の支払い義務はありません。
3. 相続税の特例(小規模宅地等の特例)
法人が発行した株式で、一定の事業用に利用されている場合、評価額が減額されるケースがあります。
4. 生前贈与を活用する
生前贈与を計画的に行うことで、相続財産そのものを減らし、相続税の発生を抑えることが可能です。
相続した株を売る際の税金(譲渡所得税との関係)
相続した株を売却する際には、相続税とは別に譲渡所得税が発生します。これは、売却時の取得価格と相続時の評価額との差額に対して課税されます。
1. 譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は以下の計算式で求められます。
譲渡所得税 = (取得費+ 譲渡費用)-特別控除額
ここで重要なのは、相続した株式の取得費は「相続税評価額」となる点です。例えば、相続時に1株1,000円で評価された株式を1,500円で売却した場合、差額500円が課税対象となります。
株式の評価額の決定方法(公的基準と市場価格)
株式の評価額は、相続税の計算において非常に重要な要素となります。株式の種類により評価方法が異なり、公的基準や市場価格をどのように適用するかが決まります。
まず、上場株式については、評価方法として市場価格が明確なため、いくつかの基準が設けられています。具体的には、相続発生前後3か月間の終値の平均や、相続発生日の終値、直前6か月間の終値の平均などがあります。評価額としては、これらの中で最も低い価格が採用されるため、相続税額を抑えることができます。
次に、非上場株式の評価方法についてですが、市場で自由に取引されないため、評価が複雑になります。非上場株式の場合、主に「純資産価額方式」、「類似業種比準方式」、および「配当還元方式」が使用されます。純資産価額方式は、会社の純資産を基準に算定される方法で、類似業種比準方式は、上場企業の財務データを基に評価します。配当還元方式は、過去の配当実績をもとに評価する方法です。
また、相続税を軽減するためには、戦略的に生前贈与を活用することが非常に有効です。生前贈与の活用にはいくつかの方法があります。
まず、暦年贈与制度では、1年間に110万円までの贈与が非課税となります。このため、毎年少額ずつ贈与を行うことで、相続財産を減少させ、相続税の負担を軽減することができます。
また、相続時精算課税制度では、60歳以上の親から20歳以上の子へ、2,500万円までの贈与が非課税となります。この制度では、相続時に贈与額が合算されて相続税が計算されるため、特に大きな贈与を行いたい場合に有効です。
さらに、事業承継を行う際には、非上場株式の生前贈与が有効です。特に、事業承継税制を活用することで、一定の条件下で贈与税や相続税が猶予または免除されるメリットがあります。この方法は、スムーズに株式を移転できるだけでなく、相続税負担を大きく軽減することが可能です。