相続放棄を行おうとしても、特定の行動をとると「単純承認」とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。単純承認とは、相続財産を受け継ぐことを明示または暗示的に認めたと判断される状態を指します。民法第921条により、以下の行為を行うと単純承認とみなされ、相続放棄が無効となる可能性が高くなります。
■単純承認とみなされる行動
1.相続財産を処分した場合
- 被相続人(亡くなった方)の財産を売却したり、形を変えたりすると、相続を認めたと判断される可能性があります。
2.遺産を使用した場合
- 現金を引き出して使ったり、被相続人名義の車や不動産を利用すると、単純承認と見なされることがあります。
3.相続財産で借金を返済した場合
- 例えば、被相続人の銀行口座から借金返済を行うと、その行為自体が相続を認めたとみなされることがあります。
4.遺産分割協議に参加した場合
- 他の相続人と一緒に遺産分割協議を行うと、相続の意思を示したと判断される可能性があるため注意が必要です。
5.家庭裁判所への申述前に遺産の管理を始めた場合
- 例えば、相続財産の賃貸契約を継続したり、事業を継続したりすると、相続を受け入れたとみなされることがあります。
相続放棄を検討している場合は、これらの行動を慎重に避けることが重要です。
債権者からの請求に注意!相続放棄の落とし穴
相続放棄をしたにもかかわらず、債権者から借金返済を請求されるケースがあります。このような状況に陥る理由として、以下のような要因が考えられます。
■相続放棄後に債権者から請求されるケース
1.連帯保証人になっていた場合
- 被相続人の借金に対して生前に連帯保証人になっていた場合、相続放棄をしても連帯保証債務は消えません。
2.家庭裁判所に申請していない場合
- 単に相続を放棄する意思を示すだけでは無効であり、正式に家庭裁判所に申述しない限り、相続放棄は成立しません。
3.相続放棄が認められる前に財産を処分した場合
- 相続放棄を申し立てる前に財産を処分すると、単純承認と見なされるため、債務を負う可能性があります。
■債権者からの請求を防ぐための対策
- まずは相続財産の内容を確認し、被相続人の負債がどの程度あるのかを把握する。
- 相続放棄の手続きが完了する前に債権者へ返答しない。
- 司法書士や弁護士に相談し、正しい手続きを進める。
相続放棄をしても一部のケースでは責任を負うことになるため、慎重な判断が求められます。
遺産を一部使用すると相続放棄は無効?
相続放棄を検討している場合、遺産を少しでも使用すると無効になる可能性があります。具体的にどのような行為が無効となるのかを確認しておきましょう。
■無効となる可能性がある行為
1.現金を使用した場合
- 被相続人の口座からお金を引き出し、生活費やその他の用途に使用すると、相続の意思を示したと見なされる可能性があります。
2.預貯金を解約した場合
- 被相続人の銀行口座を解約し、現金を手元に置くと相続を認めたことになります。
3.不動産を売却した場合
- 被相続人が所有していた不動産を売却すると、単純承認とみなされることがあります。
4.自宅の光熱費や固定資産税を支払った場合
- 被相続人の名義で登録されている自宅の光熱費や税金を支払う行為も、相続を認めたと判断される可能性があります。
■うっかり使ってしまった場合の対処法
- すぐに家庭裁判所に相談し、状況を説明する。
- 弁護士や司法書士に依頼し、裁判所へ正式な申請を行う。
- 使用した金額がごく少額である場合は、相続放棄が認められる可能性があるため、専門家の意見を仰ぐ。
相続放棄を希望する場合は、遺産には手をつけないことが鉄則です。