相続放棄の手続きと判断基準とは?メリットとデメリットも詳しく紹介

query_builder 2025/04/18
著者:鶴見総合法律事務所
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相続放棄の手続きを考えたとき、こんな不安や疑問を抱えていませんか?


「借金だけが残ったらどうしよう」「放棄したら保険金や遺産も全て諦めなきゃいけないの?」「家庭裁判所の手続きが面倒そう…」。相続放棄は被相続人の死亡から原則3か月以内に判断しなければならず、その間に戸籍謄本や必要書類を集め、申述を提出しなければならないなど、一般の人にとっては非常にハードルの高いものです。


実際に、相続放棄の申述件数は全国で年間20万件を超えています。その中で、提出書類の不備や提出期間の誤認により「却下」されるケースも少なくありません。また、家族全員が放棄すると相続順位が変わり、思いがけず兄弟姉妹や甥姪に影響が及ぶことも。


この記事では、相続放棄にまつわるメリット、デメリット、判断基準、費用、家庭裁判所の流れなどを、司法書士や弁護士の実務経験と最新の家庭裁判所統計をもとに徹底的に解説します。


読後には「自分や家族にとって最適な判断は何か」が明確になり、損失回避の観点でも後悔のない選択ができるはずです。今、相続でお悩みのあなたの不安を解消するために、ぜひ最後まで読み進めてください。

相続問題の解決をサポートします - 鶴見総合法律事務所

鶴見総合法律事務所では、法律に関する幅広いサービスを提供しております。特に相続に関する問題については、専門知識と豊富な経験を持つ弁護士が親身になってサポートいたします。相続人間でのトラブルや遺言書作成、遺産分割協議など、複雑な問題にも丁寧に対応し、円満解決へ導きます。どんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。私たちは、お客様の大切な問題をしっかりと解決できるよう、全力でサポートいたします。

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相続放棄とは?法律で定められた「放棄」の意味と制度の全体像を理解する

相続放棄の定義と民法の根拠条文

相続放棄とは、被相続人の死亡によって開始する相続に対し、相続人がその地位を放棄する法的行為をいいます。これは相続人が相続によって得られる財産や義務、つまり資産も負債も一切引き継がないとする決断を正式に家庭裁判所へ申述することで成立します。


民法第915条により、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述することが義務付けられており、これを「熟慮期間」と呼びます。また、民法第939条では相続放棄の効果として「初めから相続人でなかったものとみなす」と明記されています。つまり、相続放棄をすれば、その人は初めから相続人でなかったことになるため、遺産分割協議への参加義務も生じません。


相続放棄は「申述」という方式によって行われるため、単に遺産を受け取らないと口頭で言ったり、辞退の意思を親族に伝えたりするだけでは成立しません。法律上は必ず申述書を作成し、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する必要があります。申述が家庭裁判所により「受理」されて初めて相続放棄が成立します。


以下は相続放棄の基本概要です。


項目 内容
手続き先 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
提出書類 相続放棄申述書、戸籍謄本、住民票除票など
費用 収入印紙800円、郵便切手(数百円程度)
熟慮期間 被相続人の死亡を知った日から3か月以内
放棄の効果 相続開始時に遡って相続人でなかったことになる


この制度は、特に借金や負債が多い被相続人の財産を引き継ぎたくない相続人にとって非常に重要な選択肢です。放棄をしなければ、たとえ財産にプラスがなかったとしても借金や連帯保証債務を引き継ぐ可能性があります。したがって、負債を相続したくないと考える相続人にとって、相続放棄はリスク回避のための有効な手段といえるでしょう。

単純承認・限定承認との違いと選択基準

相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの選択肢が法律で認められています。それぞれの制度は相続の仕方が異なり、相続人が置かれている状況や財産の内容によって最適な選択が変わります。


単純承認は、相続財産も負債もすべてを無条件で承継する方法です。例えば被相続人に多額の預貯金がある一方で負債がほとんどないような場合、単純承認が選ばれやすくなります。しかし、たとえ後から負債が見つかったとしても、それもすべて引き継ぐ義務が生じます。民法上では、相続財産の全部または一部を処分したり、熟慮期間を過ぎても申述がなされなかった場合、単純承認とみなされます。


限定承認は、相続によって得た財産の範囲内でのみ負債を支払う制度です。つまり、負債の総額が財産を超えていたとしても、自分の資産から支払う必要はなく、あくまで相続財産の中で精算が行われます。限定承認にはすべての共同相続人が合意し、共同で申述しなければなりません。この点がデメリットとなり、実務上は利用件数が非常に少ないのが現状です。


以下は3つの制度の比較表です。


区分 相続放棄 単純承認 限定承認
財産の継承 しない(ゼロ) すべて継承 プラスの財産のみ
負債の責任 負わない すべて負う 財産の範囲内でのみ責任
手続き要件 個人で家庭裁判所に申述 手続き不要(何もしなければ適用) 全相続人の同意が必要・家庭裁判所へ申述
向いているケース 借金が明確に多い 資産が明確にプラス プラスかマイナスか不明な場合、リスクヘッジに適用


選択に迷った場合は、まずは相続財産の調査を丁寧に行うことが重要です。相続税の申告期限なども絡むため、期限内に判断する必要があります。また、財産の評価や調査には時間を要することがあるため、早期に専門家である司法書士や弁護士に相談することが推奨されます。

相続辞退との混同に注意

一般的に「相続を辞退する」という表現が使われることがありますが、これは法律用語ではありません。法的に正しいのは「相続放棄」という概念であり、「辞退」と口頭で述べたり、遺族間で話し合って放棄の意志を示しただけでは、正式な相続放棄にはなりません。


実際、遺産分割協議に参加しない、遺産を受け取らないと宣言する、手続きを一切行わないなどの行動は、単なる意思表示に過ぎず、相続放棄の法的効力は一切発生しません。もしそのまま熟慮期間を経過すれば、結果的に単純承認とみなされ、債務をすべて負担することになります。


特に相続放棄が有効となるためには、家庭裁判所への「申述」が必須であり、これはあくまでも法的な手続きに基づくものです。民法においても、放棄は「申述によってのみ成立する」とされており、民法第938条がその根拠となります。


次に多い誤解は、遺産分割協議書に「相続を放棄する」と記載して署名・捺印することで放棄が成立すると思い込むケースです。これはあくまで遺産の分け方に同意しないことを示すものであり、法的な放棄ではありません。法的な意味での相続放棄とは完全に別物です。


相続辞退との誤認によるトラブル例も後を絶ちません。以下のような事例が実際に発生しています。


1 被相続人の兄弟が「財産は要らない」と家族に伝えたが申述をしておらず、後に判明した借金を請求された
2 親族内で「放棄することで合意」したものの、誰も申述しておらず全員が相続人扱いとなった

こうした誤解を避けるためにも、相続放棄は単なる感情や口約束ではなく、法律に基づいた正式な行為であることを理解することが大切です。弁護士や司法書士への相談を通じて、制度的な理解を深めた上で手続きに臨むことが、将来的なトラブルを防ぐ確実な方法といえるでしょう。

相続放棄の手続き方法!誰でもできる正しい流れと必要書類を完全網羅

自分でできる!相続放棄の具体的な流れと申述のステップ

相続放棄の手続きは、法律上は家庭裁判所への申述により成立しますが、その流れを正しく理解していないと却下されたり、無効とされるリスクがあるため注意が必要です。実際に「手続きが煩雑そう」「費用が高そう」と感じて専門家に依頼する方も多いですが、内容をしっかり理解すれば自分で対応することも十分に可能です。


まず大前提として、相続放棄は「相続の開始を知った日から3か月以内」に手続きを完了させる必要があります。この期間を過ぎてしまうと、法律上は単純承認(財産も負債もすべて相続する状態)とみなされ、放棄することができなくなるため、時間管理が最重要です。


相続放棄の大まかなステップは以下の通りです。


  1. 被相続人の死亡の確認と死亡日を特定
  2. 相続関係(法定相続人)と財産の有無・内容を調査
  3. 必要書類を収集(戸籍謄本、住民票、除票、申述書など)
  4. 相続放棄申述書を作成
  5. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述書と書類を提出
  6. 裁判所からの照会書に回答
  7. 裁判所による審査・相続放棄の受理通知を受け取る


以下、全体の流れを時系列で整理します。


手順 内容 注意点
1 死亡日・相続開始日の確認 「死亡を知った日」から起算することが重要
2 財産・負債の調査 借金があるか、資産があるかを冷静に確認
3 必要書類の収集 相続人全員分の戸籍など時間がかかる可能性あり
4 申述書の作成 書き間違いや記載漏れが却下の原因になるため慎重に
5 家庭裁判所へ提出 管轄の確認が必要(被相続人の最後の住所地)
6 照会書への返送 記入ミスや期限遅れは不受理となることがある
7 受理通知の到達・保管 保管しておくことで後日の証明に使える


特に注意すべきは、家族内で「相続しないつもり」と話し合っていたとしても、法的には何の効力もないという点です。相続放棄は必ず家庭裁判所という公式な場を通じて行わなければなりません。


また、申述が完了し受理された場合には、その事実を他の相続人や債権者にも周知しておくとトラブル防止に繋がります。放棄によって次順位の相続人(たとえば兄弟姉妹など)に権利が移るため、その人たちが知らぬ間に相続の責任を負わされることを避ける意味でも重要です。

申述書の記入方法と注意すべき文言

相続放棄の申述において中核となるのが「相続放棄申述書」の記入です。この書類には法律上必要な情報を正確に記入する義務があり、記載ミスや曖昧な表現があると、家庭裁判所によって却下される可能性があるため慎重な対応が求められます。


申述書に記載すべき主な項目は以下の通りです。


  1. 被相続人の氏名・本籍・死亡日
  2. 自分との関係(相続人としての立場)
  3. 相続放棄の理由(簡潔に記載)
  4. 相続の開始を知った日
  5. 自身の住所・氏名・連絡先


以下に、家庭裁判所が推奨する記入の例を示します。


項目 記入例 補足
被相続人の氏名 山田 太郎 戸籍と同一に記載すること
被相続人の本籍 東京都千代田区〇〇町1丁目1番地 最新の戸籍謄本を参考に記入
死亡日 令和7年3月1日 死亡診断書または除籍謄本の記載を確認
相続開始を知った日 令和7年3月2日 原則として死亡日翌日。例外は親族の申告等
相続放棄の理由 被相続人に多額の借金があるため 長文不要。明確かつ簡潔に理由を書く
本人の続柄 長男 相続順位に影響するため誤記に注意
本人の氏名・住所 山田 一郎 東京都〇〇区△△町1-2-3 住民票と一致している必要がある


申述書は家庭裁判所のウェブサイトからダウンロード可能ですし、裁判所の窓口でも配布しています。書類には収入印紙(800円)を貼付する必要があるため、購入も忘れないようにしましょう。


なお、記入の際に「放棄の理由」は自由記述ですが、感情的な表現(例:父とは仲が悪かったため、等)は避け、あくまでも客観的な経済的理由や制度上の事情を記載するのがベターです。


家庭裁判所の審査では、相続放棄の理由をもとに判断するというよりも、書類が法的に整っているか、期限内に提出されているかを重視します。そのため、細部にわたる記入チェックと書類の整合性確認が最重要です。

家庭裁判所へ提出する方法と郵送・窓口の違い

相続放棄申述書を提出するには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ届け出る必要があります。このときの提出方法には主に2つあり、「窓口提出」と「郵送提出」です。それぞれの方法にメリットと注意点があるため、比較検討のうえ自分に合った方法を選ぶことが重要です。


以下に窓口提出と郵送提出の違いをまとめました。


比較項目 窓口提出 郵送提出
受付時間 平日8時30分~17時(裁判所による) 24時間投函可能(ただし配達まで時間要)
書類確認 職員が直接確認し、誤りがあれば即対応可 不備がある場合、再送の連絡と時間ロスあり
費用 収入印紙800円+切手代 収入印紙800円+切手代+返信用封筒が必要
所要日数 即日受付可(照会書発送まで1~2日) 書類の到達と確認に3~5営業日かかることもある
利便性 地元や通勤圏に裁判所がある人向け 遠方に住んでいる、平日対応が難しい人に便利


郵送を選ぶ場合には、必要書類に加えて「返信用封筒(切手貼付)」も同封することが求められます。返信用封筒がないと、裁判所からの受理通知や照会書が届かず手続きが滞るため注意が必要です。


また、郵送する際は書類の紛失を防ぐため「簡易書留」や「特定記録郵便」などの追跡可能な方法を推奨します。万が一、期日内に届かなかった場合は相続放棄の効力が発生せず、重大な法的リスクを伴います。


一方で、窓口提出の最大のメリットはその場で記入内容を確認してもらえる点です。特に初めて手続きをする方にとって、職員との会話を通じて不安を取り除くことができるのは大きな安心材料といえます。


相続放棄の申述は原則として1回限りであり、撤回もできません。だからこそ、提出方法の選択においても自分の生活スタイルやリスク管理を意識し、確実性を優先することが重要です。専門家のアドバイスを受けることで、よりスムーズかつ確実な手続きが可能になるケースもあるため、不安がある場合は弁護士や司法書士に一度相談するのも有効な選択肢です。

相続放棄した後の影響とは?次順位の相続人と家族への波及

兄弟姉妹・甥姪への相続移行の流れ

相続放棄は、相続人が遺産を一切受け取らないとする法的な意思表示であり、これにより次順位の相続人へと相続権が移行します。まず基本として、法定相続人には優先順位があり、第一順位は子ども、次に父母などの直系尊属、第三順位が兄弟姉妹となります。仮に第一・第二順位の相続人がすべて相続放棄した場合、第三順位である兄弟姉妹や、その代襲相続人である甥姪が相続人となるのです。


このとき、以下のようなパターンが発生します。


相続放棄した人 次に相続する人 備考
子ども全員 被相続人の親 第二順位へ移行
子ども+親 被相続人の兄弟姉妹 第三順位へ移行
兄弟姉妹が死亡 甥姪(代襲相続) 代襲相続が成立する


注意すべきは、兄弟姉妹に相続が移行する場合でも、本人が相続放棄をすると、甥や姪へとさらに波及することです。相続の意思表示が行われないまま時間が経過すると「単純承認」扱いとなることもあり、債務を背負うリスクも伴います。


特に借金や相続財産が不明確な場合、兄弟姉妹や甥姪が突然通知を受け取って困惑するケースも珍しくありません。以下のような対応の違いがよく問題になります。


立場 相続の発生 放棄の期限 申述先
兄弟姉妹 先順位が全員放棄した後 その通知を受け取ってから3か月以内 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
甥・姪(代襲相続人) 兄弟姉妹が死亡している場合 通知を受けた日から3か月以内 同上


共通して求められるのは、戸籍謄本や住民票などの「必要書類」の迅速な取得と、家庭裁判所への「相続放棄申述書」の提出です。特に次順位の人は、自分が相続人になっていることを自覚していないことも多く、放置すると財産とともに借金や税金の滞納金を受け継ぐ可能性があります。


放棄の連鎖が続くと、最終的には市町村などが「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てることもあります。これにより、相続財産は国に帰属するか、管理人により整理・清算される流れになります。

相続放棄した後の不動産・借金の管理責任とは

相続放棄を行った後でも、特定の状況下では不動産や借金に関して「管理義務」が生じることがあります。これは相続放棄=完全に関係が切れる、という誤解によって後のトラブルに発展することがあるため、正確な知識が不可欠です。


まず、相続放棄の申述が受理されたとしても、他に相続人がいない(または全員放棄した)場合、財産が宙に浮いた状態になります。このような状態を「相続人不存在」と呼びます。以下のような資産・負債が存在する場合、放棄者であっても一時的に管理の責任を問われる可能性があります。


財産の種類 放棄者の関与の可能性 説明
不動産(土地・建物) 仮管理の必要が生じることがある 他人が不法占拠している場合など、維持管理が社会的義務とされることがある
借金(負債) 債権者から督促が届くことがある 実際には支払義務なし。ただし対応しないと誤解を招く場合あり
賃貸契約 管理人不在で契約解除が遅れる 法定代理人の選任が遅れると損害が発生するリスクあり


特に、放棄者が相続財産に手を出すと「相続を承認した」とみなされるケースがあるため、注意が必要です。たとえば、遺産の一部を売却したり、故人の口座からお金を引き出した場合、放棄の効力が失われるリスクがあります。


民法940条では、相続放棄者であっても「管理義務を怠ったことで他人に損害が出た場合」は責任を問われるとされています。よって、完全に放置するのではなく、早急に家庭裁判所へ「相続財産管理人」の選任申し立てを行うなどの措置をとることが求められます。


このような事態を防ぐには、事前に弁護士や司法書士など専門家へ相談し、「リスク回避の流れ」を把握しておくことが重要です。法テラスなどの公的機関を利用すれば、無料で初回相談ができるケースもあります。

放棄後も届く通知への対処法とやってはいけない行為

相続放棄を済ませた後であっても、被相続人の債務や契約に関する通知書が届くケースがあります。たとえば「クレジットカードの督促状」「不動産固定資産税の納税通知」「消費者金融からの返済請求」などです。


これらの通知を無視することはできませんが、最も重要なのは「決して支払ってはいけない」という点です。支払いをした瞬間、相続財産に対する処分行為とみなされ、相続放棄の効力が否定されるおそれがあります。


また、放棄後にありがちな「やってはいけない行為」として、以下が挙げられます。


  • 遺品を処分する
  • 銀行口座を解約する
  • 故人の保険金を受け取る
  • 家屋に居住し続ける(場合により承認行為と判断される)


これらはすべて、民法上「相続の承認」とみなされ、せっかく行った相続放棄が無効になるリスクを伴います。判断がつかない場合は必ず専門家に確認をとりましょう。


また、放棄後に通知が来る理由として、金融機関や行政機関が放棄の事実を知らないケースがあります。そのため、「受理証明書のコピーを添付して通知元に郵送する」という対応が非常に効果的です。


放棄をしても一切無関係にはなれないという現実を踏まえ、慎重に、かつ正確に対応していく必要があります。読者の方が同じような状況に直面した場合も、この記事がトラブル回避の参考となれば幸いです。

兄弟・子供・親など続柄ごとの相続放棄手続きの違いと必要書類

兄弟姉妹が放棄する際の手続きとトラブル例

相続放棄を行う際、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、親や配偶者・子どもがすでに亡くなっていたり、全員が相続放棄しているという前提があります。このような続柄特有の立場から、手続きの内容や必要書類、発生しがちなトラブルまでを具体的に解説します。


まず、兄弟姉妹が相続放棄をする際の手続きの基本的な流れは以下のとおりです。


兄弟姉妹が相続放棄する際の基本手続きの流れ

手続きステップ 内容 注意点
1 被相続人の死亡を確認 戸籍謄本や除籍謄本で法定相続人であることを確認
2 相続放棄の意思決定 相続開始を知った日から3か月以内に決定する必要あり
3 家庭裁判所に申述書を提出 管轄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
4 受理通知書の到着 これにより法的に放棄が成立


相続放棄の申述にあたっては、「相続放棄申述書」「被相続人の死亡が記載された戸籍謄本」「自分との関係を証明する戸籍謄本」「収入印紙(800円分)」「郵便切手」などの提出が必要になります。兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人との関係が離れているため、必要な戸籍が多数におよぶケースが多く、取得に時間と手間がかかることがよくあります。


兄弟姉妹の相続放棄でよくある疑問と注意点

  1. 戸籍の取得が難しい場合はどうする?  兄弟姉妹が相続放棄をする場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる必要があるため、「改製原戸籍」や「除籍謄本」などの取得が求められます。特に高齢者のケースでは、戸籍が複数の市区町村にまたがることもあり、郵送でのやり取りに時間がかかる点に注意してください。
  2. 相続放棄後に財産があることが判明した場合どうなる?  相続放棄は原則として撤回できません。ただし、家庭裁判所で「詐欺」や「脅迫」があったと認められた場合など、ごく限定されたケースでは例外もあります。
  3. 他の兄弟と連携せずに進めても問題ない?  兄弟姉妹間で放棄の意思がバラバラな場合、「一人だけ放棄した結果、自分の子どもに相続が移ってしまった」といった誤算が生じることもあります。事前に兄弟間で連絡を取り、放棄の有無や順序をすり合わせておくのが無難です。
  4. 甥や姪へと相続が回るとどうなる?  兄弟姉妹が相続放棄すると、その子どもである甥姪が相続人となります。甥姪が未成年者であれば、特別代理人の選任が必要になる可能性があり、さらに手続きが複雑化します。


兄弟姉妹が相続放棄する際は、単に書類を揃えて提出するだけでなく、親族全体の相続関係や順位を見通したうえで行動する必要があります。家庭裁判所や司法書士への早期相談が、不要なトラブルを未然に防ぐ鍵となります。

子供が相続放棄をする場合の注意点

子供が相続人となった場合でも、相続放棄の申述は可能です。ただし、未成年者が手続きする場合には注意すべき法律上の制約が多く、親権者が代理で進める場合や、特別代理人の選任が必要なケースもあるため、慎重な対応が求められます。ここでは、未成年者の相続放棄に関する注意点と実務上の流れ、トラブル例を含めて詳しく解説します。


未成年者が相続放棄する際の一般的な流れ

ステップ 内容 補足・注意点
1 被相続人の死亡と相続開始の認知 原則、死亡の事実を知った時点から3か月以内が申述期限
2 親権者が放棄を希望する 子のために家庭裁判所に申述準備を行う
3 利益相反があるか確認 親自身も相続人の場合は「特別代理人」の選任が必要
4 必要書類の収集と申述書作成 戸籍謄本、住民票、収入印紙、郵便切手などを用意
5 家庭裁判所へ提出 子の住所地の家庭裁判所が管轄になる場合が多い


未成年者の相続放棄では、以下のような疑問が非常に多く寄せられます。


よくある疑問とその対応

  1. 未成年の子どもが相続放棄するにはどう進める?  親が親権者として手続きを代理できますが、親自身も相続人である場合(たとえば、父親が死亡し、母と子どもが相続人)のように親と子の間に「利益相反」がある場合には、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要です。
  2. 特別代理人の選任にはどのくらい時間がかかる?  選任の申立てから1〜3週間程度が目安です。ただし、家庭裁判所の混雑状況や提出書類の不備があるとさらに延びることもあります。3か月の熟慮期間に注意が必要です。
  3. 書類の準備で見落としがちなポイントは?  未成年者の住民票、親権者の戸籍謄本、申述書、申立書、特別代理人選任申立書など、種類が多く、特に相続人が複数いる場合は各戸籍とのつながりを証明するために「改製原戸籍」なども求められます。
  4. 子どもが複数いる場合、全員まとめて放棄できる?  できません。それぞれの子どもごとに個別で申述を行う必要があり、また特別代理人も別々に設定することが推奨されます(同一人物が兼ねるケースもありますが、裁判所の判断によります)。


特別代理人の申立てに必要な書類

書類名 解説
特別代理人選任申立書 家庭裁判所所定の様式。未成年者1人につき1通必要
戸籍謄本 未成年者、親権者、被相続人との関係を証明するもの
利益相反の理由書 なぜ親が代理できないかを記載(書式自由)
特別代理人の承諾書 候補者が内容を理解し、署名・捺印を行う


子どもが相続放棄をする場合には、大人と異なり、家庭裁判所による手続きがより厳格になります。特に親権者との利益相反が関与する場面では「特別代理人」の選任が求められ、早期の準備が欠かせません。リスクを避けるためには、弁護士や司法書士など専門家への相談を推奨します。

まとめ

相続放棄は、被相続人が残した借金や負債を引き継がずに済む制度として注目されています。特に、親の借金や住宅ローン、税金の滞納といった「マイナスの財産」を回避できる点は大きなメリットです。家庭裁判所に対して行う申述は、死亡を知ってから原則3か月以内という期限が設けられており、この期間を過ぎると原則として放棄は認められません。全国の家庭裁判所では年間20万件超の相続放棄申述がなされており、それだけ多くの人が判断に迷い、手続きを選択しているのが現状です。


一方で、相続放棄には見落とされがちなデメリットも存在します。たとえば、生命保険金の受取や、故人の不動産に残された動産類の処分すらできなくなるケースもあります。また、相続人全員が放棄すると次順位である兄弟姉妹や甥姪に相続権が移り、トラブルの火種となることも少なくありません。このような構造的な仕組みや、続柄によって異なる必要書類の取得、放棄後も届く通知への対応など、事前に理解しておくべき点は非常に多いのです。


この記事では、相続放棄に関する流れや必要書類、費用相場、司法書士や弁護士に依頼する際の注意点まで、具体例と共に解説しました。放棄するか否かを判断するためには、メリットとデメリットを冷静に比較し、自身の家族構成や相続財産の内容、債務の有無を丁寧に調査することが重要です。


判断を先延ばしにしてしまうと、放棄できるはずの借金を抱えるリスクもあります。今後の家族への影響を含めて、「損失回避」の視点で今すぐ動くことが、後悔のない選択につながります。相続放棄は一度申述が受理されれば撤回できないため、慎重かつ計画的に進めましょう。

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よくある質問

Q. 相続放棄をすると生命保険や遺族年金も受け取れなくなりますか?
A. 一般的に、相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができます。これは生命保険金が「相続財産」ではなく、「受取人固有の財産」として扱われるためです。ただし、被相続人が受取人を指定していない場合や、契約内容によって異なるケースもあります。相続放棄したつもりが実際には生命保険に手を付けていたと誤認されないよう、専門家に内容を確認するのが安全です。


Q. 放棄後に届いた請求書や督促状にはどう対応すればいいですか?
A. 相続放棄が受理された後であっても、債権者や金融機関から通知や請求書が届くことがあります。これは法的効力とは無関係に、一律の宛先へ送付している場合が多いためです。重要なのは、その請求に対して「支払う意思」を示さないことです。たとえば一部を支払ってしまうと、相続を承認したと見なされる恐れがあります。通知が届いた場合は、放棄済であることを証明する書類を添えて説明するか、対応に不安がある場合は弁護士へ相談しましょう。


Q. 兄弟姉妹や子供など続柄によって手続きは変わるのですか?
A. 相続放棄の基本的な手続きは共通していますが、続柄によって必要書類や確認事項に違いがあります。たとえば兄弟姉妹が相続放棄する場合、被相続人との続柄を証明するために改製原戸籍や除籍謄本などの複数の戸籍書類が必要になるケースが多く、取得にも手間がかかります。また、未成年の子供が相続放棄を行うには、親権者ではなく「特別代理人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があるため、一般的なケースと比較して期間が延びる傾向にあります。自分の立場に応じた正確な書類を準備することが、申述受理への近道となります。

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