相続放棄の申立てで期間を延ばす理由と方法について

query_builder 2025/05/15
著者:鶴見総合法律事務所
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相続に直面したとき、期限内に判断しなければならない「放棄」という選択肢があることをご存じですか。家庭裁判所に申述をするには、被相続人の死亡や相続財産の存在を把握してから熟慮期間の中で行動しなければなりません。しかし実際には、相続財産の調査や債務の確認に時間がかかり、対応に悩む人が少なくありません。

 

特に相続放棄の期間について、開始の起算点や伸長の申立てが可能な事情を正しく理解していないと、裁判所に申述が受理されないケースもあります。申述期限を過ぎたまま財産を処分した場合、単純承認とみなされるリスクがあるため、慎重な判断と正確な知識が必要です。

 

実務上では、申立書の書き方や添付資料の内容も判断に影響するため、法律事務所や弁護士法人への相談が有効です。放棄の意思があっても、書類の不備や理由の不明確さによって申請が却下される可能性もあります。損失回避の観点からも、相続放棄における期間や申立ての方法を知っておくことは極めて重要です。

 

相続放棄の期限や申述の手続きに関する制度の仕組みや、期間を延ばすために必要な事情や書類の考え方まで、申立てを検討する相続人が陥りやすい課題を丁寧に取り上げていきます。相続財産の取り扱いに迷っている方も、読み進めることで判断材料が明確になるはずです。

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鶴見総合法律事務所では、法律に関する幅広いサービスを提供しております。特に相続に関する問題については、専門知識と豊富な経験を持つ弁護士が親身になってサポートいたします。相続人間でのトラブルや遺言書作成、遺産分割協議など、複雑な問題にも丁寧に対応し、円満解決へ導きます。どんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。私たちは、お客様の大切な問題をしっかりと解決できるよう、全力でサポートいたします。

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相続放棄の制度と期間に関する基本的な仕組み

相続放棄とは何かを知ることの大切さ

相続放棄という言葉は、多くの人が家族の死をきっかけに初めて耳にすることが多いものです。この制度は、相続人が被相続人の遺産を一切受け取らないという意思を明確にし、法律上もその権利を放棄するものです。財産を受け取らないだけではなく、借金などの債務も相続しない点が特徴といえます。こうした判断は非常に重要であり、状況をしっかりと理解したうえで進める必要があります。

 

被相続人に多額の借金があった場合、相続人が財産と一緒にその債務も引き継いでしまうことがあります。このような場合に、相続放棄を選択することで、債務の返済義務から免れることができるのです。ただし、相続放棄を選んだからといって、すべてが自動的に解決されるわけではありません。手続きには一定のルールと期間が定められており、それに従わなければ無効と判断されることもあります。

 

制度としての相続放棄は、民法に定められた権利の一つであり、家庭裁判所への申述によって正式に成立します。この申述が受理されることによって、相続人としての立場は最初からなかったものとみなされます。つまり、法律上は一切の相続に関与していないことになります。この扱いは、他の親族や債権者にも大きな影響を与えるため、慎重な対応が求められます。

 

相続放棄を検討する際には、誰が相続人となっているのか、相続財産がどの程度存在しているのか、そして債務の有無など、多くの情報を整理する必要があります。財産の全貌が見えないうちに安易な判断をしてしまうと、後々取り返しのつかない事態に発展することがあります。そのため、専門家に相談することや、事前に相続財産の調査を進めることが大切です。

 

以下の内容は、相続放棄を考える際に多くの人が直面する比較事項です。

 

検討項目 相続を承認した場合 相続放棄をした場合
財産の取得 プラスの財産とマイナスの債務を含めすべて引き継ぐ 財産も債務も一切取得しない
借金の返済義務 相続人が引き継ぐ 借金の返済義務から免れる
相続人の立場 相続手続き全体に関与する 最初から相続人でなかったとみなされる
他の相続人への影響 遺産分割協議に参加する必要がある 次順位の相続人に通知が行くことがある
手続きの負担 財産調査や申告、分割協議などが必要 家庭裁判所への申述のみが基本となる

 

相続放棄は、単に「何ももらわない」という意思表示ではなく、法律的な手続きと効力を伴う制度です。適切に理解しないまま進めると、単純承認と見なされる行動をとってしまうこともあるため注意が必要です。身近な家族の問題だからこそ、感情だけで判断せず、冷静な対応を意識することが重要です。

3か月の期限はどのように決まるのか

相続放棄には、法律で定められた明確な期限が存在します。これは「相続の開始を知った時から3か月以内」という期間であり、熟慮期間とも呼ばれています。この期間内に申述を行わなければ、相続放棄は認められなくなる可能性があるため、慎重な判断と迅速な行動が求められます。

 

多くの人が誤解しやすいのが、「死亡日から3か月」だと思い込んでしまう点です。実際には、法律上の起算点は「自己のために相続が開始されたことを知った時」とされており、この点を正確に理解する必要があります。つまり、被相続人の死亡を知ったタイミングや、自身が相続人であることを認識した時点が起算点になるのです。

 

疎遠だった親族の死亡を後から知らされた場合や、遺産の存在を後から知ったケースでは、その通知を受け取った時点が起算点となります。こうしたケースでは、裁判所に対して起算点がいつであるかを説明する必要があることもあるため、証拠となる資料や状況の整理が重要になります。

 

家庭裁判所は形式的な書類だけでなく、その背景事情も確認するため、事実関係を明確にしておくことが望ましいです。相続財産の調査が遅れたことや、連絡を受けたタイミングによって、熟慮期間の解釈が異なることもあります。

 

以下は、起算点の判断において考慮される代表的な項目です。

 

起算点の判断基準 内容
被相続人の死亡を知った日 通常はこの日が基本だが、実際の認識が遅れた場合は変動することもある
自身が相続人であることを知った日 遺言や戸籍調査などで初めて判明する場合、この日が基準になる
相続財産の存在を知った日 財産や借金の存在を知らされた日が重要視されることがある
裁判所への提出日 起算点から3か月以内に申述書が到達している必要がある

 

誤って期限を過ぎてしまうと、自動的に相続したとみなされるおそれがあり、後から放棄することは非常に難しくなります。そのため、起算点を正しく判断し、できるだけ早めに対応することが大切です。

 

期間の延長を希望する場合には、熟慮期間の伸長申立てという手続きを利用することも可能です。ただし、すべての申立てが認められるわけではなく、正当な理由と証明が求められるため、早い段階での専門家への相談が効果的です。

 

相続放棄は、期限と内容の両方において明確なルールがあります。家庭内の状況や連絡体制によって誤解が生じやすい部分でもあるため、自分が相続人になりうる立場であることに気づいたら、すぐに情報を集めておくことが安心につながります。法律上の手続きとしての重みを理解し、日数の経過を見誤らないことが何より重要です。

相続放棄の期間を判断するための起点と数え方

どの時点をもって開始とするのかを理解する

相続放棄の手続きを行う際、最も重要なポイントの一つが「いつから期間を数えるのか」という起点の判断です。多くの人が誤解しやすいのが、被相続人が亡くなった日から起算するという考え方ですが、実際には少し異なります。民法第915条に定められているように、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算することとされています。この「知った時」が具体的にいつなのかは状況によって大きく異なるため、慎重に判断する必要があります。

 

遠方に住んでいた親族が亡くなったことを後から知った場合や、家族関係が疎遠であったことで死亡自体の認識が遅れた場合は、死亡日が必ずしも起算点とはなりません。相続人であることを初めて知るきっかけが、遺言書の開示や家庭裁判所からの通知だったというケースも少なくありません。つまり、形式的な死亡日ではなく、相続人自身が相続の開始を認識した瞬間からがカウントの起点となります。

 

相続財産の内容によっても起算点がずれることがあります。財産の存在を知らず、後から多額の借金があることが判明した場合は、その時点をもって相続の内容を理解したことになり、熟慮期間の開始と解釈される可能性もあります。したがって、通知を受けた書類や口頭の連絡だけで判断せず、状況証拠をしっかりと保管しておくことが重要です。

 

相続放棄を考える際には、誰が他に相続人として存在しているかも影響します。第一順位の相続人が放棄した場合、次順位に移るため、その人たちが相続人になったタイミングが新たな起算点になります。子が相続を放棄した場合、その親や兄弟が新たな相続人となり、彼らがそのことを知った時点から3か月以内に判断をしなければなりません。

 

起算点の解釈については、裁判所の判断に委ねられる部分も多く、特に起点が曖昧な場合は慎重な証拠収集が求められます。実際に使用された通知文書、メールやLINEなどのやり取り、戸籍の取得日などが参考資料として活用されることもあります。これらは、家庭裁判所が申述の受理を判断する際の重要な根拠となるため、相続の可能性があると感じた段階で、日付と経緯を記録しておくことが後々の手続きを円滑に進める助けになります。

 

以下の表は、起算点として判断されやすい状況の整理です。

 

起点の判断例 起算点として認定されやすいか 説明内容
死亡日を知った日 高い 通常はこの日を基準とするが例外あり
遺言書を開示された日 中程度 相続財産の存在を初めて知った日として認定されることがある
相続人であると通知された日 高い 戸籍の取得や裁判所からの連絡で知ったタイミング
借金の督促が届いた日 状況による すでに承認とみなされる行動があった場合は却下されることもある
他の相続人の放棄を知った日 高い 次順位相続人に相続が移ったと認識した時点が起点になる可能性あり

 

起算点の判断を誤ると、放棄の申述そのものが受理されず、意図せず借金などの負債を背負うことになる危険もあります。一般の方にとって、どの時点が正しい起点かを判断するのは難しいことが多いため、少しでも迷ったら法律事務所や専門家への相談が重要になります。書類の準備や提出も含めて、日々の時間経過に敏感になりながら行動することが、法的なトラブルを未然に防ぐ鍵となります。

家庭裁判所の判断基準についての考え方

相続放棄の手続きにおいて、家庭裁判所は非常に重要な役割を担います。相続放棄の申述が3か月以内に行われたかどうかという点について、裁判所がどのような資料を根拠に判断するのかは、多くの人にとってわかりにくい部分です。実際のところ、裁判所は申述書の記載内容だけでなく、背景となる事情や提示された証拠によって、起算点の妥当性や手続きの適法性を判断しています。

 

裁判所が特に重視するのは、「相続の開始を知った日」が本当にいつであったかという事実です。これを証明するためには、客観的な資料が求められます。死亡届を誰がいつ出したか、戸籍謄本をいつ取得したか、相続財産の内容を把握した日付が記された書面などがあげられます。口頭のやり取りだけでは証明力が弱いため、なるべく第三者が確認できる文書や公式な記録を揃えることが望まれます。

 

家庭裁判所への申述が遅れた場合においても、一定の事情があると認められれば、申述が受理される可能性があります。被相続人との関係が疎遠で死亡を知るのが遅れた、戸籍調査に時間を要した、財産の調査に手間取ったなどの理由が、申立人の責任ではないと判断された場合です。このようなケースでは、熟慮期間の起点が遅れたことを証明する資料の提出が必要となります。

 

裁判所が判断の際に参考とする代表的な資料には以下のようなものがあります。

 

資料の種類 用途と意義
戸籍謄本・除籍謄本 相続関係の証明に使用され、取得日が重要な手がかりとなる
死亡届の受理証明書 死亡を知った時期を示す参考資料
遺言書の開示通知書 相続財産の存在を初めて知った日を証明する
金融機関からの残高通知 財産の内容や存在を把握した証拠として活用される
債権者からの連絡文書 借金の存在を知ったタイミングを裏付ける資料となりうる
郵送記録・配達証明書 通知を受け取った正確な日付を立証する際に有効な場合がある

 

申述の際には、これらの資料を添えて事情説明書を提出することで、裁判所の理解を得やすくなります。起算点が3か月を越えている申述においては、書類の質と内容が重要なポイントとなります。

 

裁判所が起算点を柔軟に判断してくれるのは、提出された資料に一貫性があり、申立人に落ち度がないと判断された場合です。そのためには、相続に関する通知があった日や、戸籍を取得した日、財産の調査を開始した日など、すべての経過を記録に残しておくことが肝心です。

 

相続放棄は、制度として広く認識されつつありますが、実際に手続きを行うとなると、その制度の枠組みと裁判所の運用のバランスを正確に理解することが欠かせません。相続財産に不動産や借金が含まれているケースでは、相続人自身の生活にも大きな影響を及ぼすため、裁判所の判断基準を踏まえた丁寧な準備が求められます。

 

時間に余裕があるように見えても、日数は確実に進んでいきます。提出書類の不備や起算点の判断ミスによって、放棄そのものが無効になる可能性を避けるためにも、早めに専門家に相談し、必要書類の取得や提出のスケジュールを計画的に進めることが大切です。相続放棄の手続きを安心して進めるためには、こうした視点からの対応が何よりも重要といえるでしょう。

相続放棄の手続きを進める際に必要な流れ

申述に必要となる書類や準備の一覧

相続放棄の手続きにおいて、必要書類の準備は非常に重要なステップです。特に相続人が複数いる場合や被相続人の財産が多岐にわたるケースでは、準備すべき書類が多くなり、注意が必要です。申述書の記載内容が正確であるか、添付書類が不足していないかの確認が求められます。家庭裁判所は形式不備に対して厳格であるため、ひとつの記載ミスが申述却下の原因になることもあります。

 

相続放棄の申述にあたって準備する必要がある主な書類は、以下のように分類されます。

 

書類名 概要 注意点
相続放棄申述書 相続放棄の意思を家庭裁判所に伝える文書 記載内容に不備があると受理されない可能性あり
被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本 被相続人の死亡を証明する資料 最新の戸籍情報が必要
相続人全員の戸籍謄本 相続人であることを示す証明書類 一部除籍や改製原戸籍が必要になることもある
住民票の除票または戸籍の附票 被相続人の最終住所を確認するための証明書 提出先の家庭裁判所の管轄判断に関わる
収入印紙と郵便切手 手数料と通知に使用される 裁判所ごとに金額や枚数が異なる場合がある

 

これらの書類を準備するうえで注意すべき点は、被相続人と相続人との続柄が複雑な場合や、転籍・結婚等で本籍地が変更されている場合です。このようなケースでは、複数の役所から除籍謄本や改製原戸籍を取得する必要があることがあり、申立てまでの準備に時間を要する場合があります。

 

収入印紙の金額や郵便切手の種類については、各家庭裁判所の公式サイトに掲載されている最新情報を確認することが重要です。収入印紙は原則として相続放棄1件につき定められた額面を添付しますが、書類の提出枚数に応じて追加の郵便費用が発生する場合もあります。特に平日に時間が取れない方は、郵便での取り寄せや申請も含めてスケジュールを逆算して計画を立てる必要があります。

 

書類の内容に疑問がある場合や複雑な家庭状況が絡む場合には、弁護士や司法書士などの専門家に早めに相談することが望ましいです。相談のタイミングが遅れると、熟慮期間を過ぎてしまう恐れがあるため、情報収集と準備はできるだけ速やかに行うべきです。

どこにどのように提出するかを確認する

相続放棄の手続きでは、家庭裁判所への提出が必要です。この際、どの裁判所へ、どのように書類を届けるかという点を正しく理解することが、申述の成功につながります。提出先の裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所と定められています。提出書類の郵送先を誤ると、手続きが無効になったり、再提出が必要になることがあるため、管轄の確認は慎重に行うべきです。

 

提出方法としては、家庭裁判所への直接持参と郵送の2つの手段が一般的です。それぞれの方法において、メリットと注意点があります。

 

提出方法 内容 メリット 注意点
持参 裁判所の受付窓口へ直接提出 即日で受付処理されることがある 平日の営業時間内のみ対応可能
郵送 書類一式を裁判所宛に郵送 時間に縛られず送付できる 不備があっても即座に対応できない場合がある

 

郵送の場合は、送付書類一式の写しを必ず手元に控えておき、送付状を同封することが推奨されます。送付状には、申述人の連絡先、同封書類の内訳、連絡希望の手段(電話・郵送など)を明記することで、裁判所の担当者とのやり取りが円滑になります。簡易書留や特定記録など追跡可能な郵送手段を選ぶことで、紛失のリスクを回避できます。

 

直接窓口に提出する場合には、家庭裁判所の受付時間を事前に確認し、可能であれば予約を取って訪問する方が望ましいです。混雑状況によっては長時間待たされることもあるため、時間に余裕を持って行動しましょう。窓口ではその場で書類の簡易な確認を受けられることもあり、不備がある場合はその場で指摘を受けられるという利点もあります。

 

管轄裁判所が遠方で訪問が困難な場合は、郵送を基本とし、必要に応じて電話などで確認を取りながら進める方法が現実的です。この際、提出期限である熟慮期間内に確実に到着するように配慮し、余裕をもって送付することが重要です。

 

相続放棄の手続きは、被相続人の死亡から3か月という限られた期間内に完了させる必要があります。そのため、提出方法を理解するだけでなく、提出タイミング、書類の正確さ、そして家庭裁判所の対応を見越した計画が求められます。誤解や遅延を避けるためにも、提出の手順を正しく把握し、早期の行動に移すことが、スムーズな手続きの鍵となります。

相続放棄の期間を延ばすために必要な手続き

期間を延長することが認められる事情とは

相続放棄の申述には、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という厳格な期限が設けられています。しかし現実には、相続人がその事実を把握できていなかったり、相続財産の全容を調査するために時間が必要である場合など、期限内に申述を行うことが困難なケースも存在します。こうした事情がある場合、相続放棄の期間延長が家庭裁判所で認められる可能性があります。

 

家庭裁判所が「相続放棄の期間を延ばすことが相当である」と判断するかどうかは、申し立てた延長理由の正当性と証拠によって左右されます。以下のような事情は、期間延長の申立てが認められる代表的な例です。

 

期間延長が認められやすい事情と根拠の一例

 

事情の分類 内容 判断のポイント
被相続人と疎遠であった 死亡を知る機会が遅れた 「死亡の通知がなかった」「交流がなかった」などの証明
相続財産の存在が判明しなかった 債務など隠れた財産が後に明らかになった 銀行からの請求通知、債権者からの連絡などの証拠
遺産調査が複雑だった 相続人の調査や相続関係が煩雑 複数の戸籍謄本の取得に時間がかかった記録など
法律知識がなかった 相続放棄の制度を知らなかった 弁護士相談の記録、相談時期、対応内容など

 

これらは実務上でも一定の説得力を持つとされており、適切な資料や証拠が伴う場合には、申立ての受理に繋がる可能性が高まります。

 

単に「忙しくて放棄を忘れていた」「よくわからなかった」といった主観的な理由のみでは、家庭裁判所の判断を得られる可能性は著しく低下します。

 

申立ての成否を分ける要素は主に以下の通りです。

 

・延長を求める理由に客観性があるか
・その理由に関する証明資料があるか
・相続財産に手を付けていないか
・熟慮期間の途中で明確に放棄の意思を形成していたか

 

申立てを行う際は「起算点の誤認」が関係する場合もあります。被相続人の死亡を知った日が3か月前であっても、債務の存在や相続人の地位を明確に認識したのが最近であると立証できれば、その日をもって熟慮期間の起算点とすることも可能です。

 

注意したいのは、裁判所の判断は事案ごとに異なるという点です。一般的な目安が通用しないケースもあり、法律相談や専門家による確認が重要になります。具体的な証拠資料の準備が期間延長の可否に直結するため、家庭裁判所への申立て前には専門家の助言を受けておくことをおすすめします。

家庭裁判所への申立書の内容を考える際の注意

相続放棄の期間を延ばすためには、「相続の熟慮期間伸長の申立て」を家庭裁判所に提出する必要があります。この申立書は形式だけでなく、実質的な理由と根拠を的確に記載することが求められます。記載内容が不十分である場合や証明資料が添付されていない場合、申立てが却下されるリスクもあります。

 

まず申立書の基本構成を理解することが重要です。以下にその主な要素を示します。

 

申立書に含めるべき基本構成と添付資料

 

項目 記載内容の要点 添付すべき資料例
申立人の情報 相続人の氏名、住所、生年月日など 本人確認書類の写し
被相続人の情報 氏名、死亡日、最終住所など 死亡の記載がある戸籍謄本
申立ての趣旨 熟慮期間を何日延ばしてほしいか 期間の妥当性がわかる理由
申立ての理由 延長が必要な具体的事情 債務通知、相続関係図、郵便物などの写し
署名・押印 申立人本人の署名捺印

 

添付資料のなかでも特に重視されるのが、「被相続人の死亡を知った時期」や「相続財産の存在を知った日」など、熟慮期間の起算点に関連する証明書類です。銀行や消費者金融などから届いた請求書、被相続人名義の通帳や保険契約書などがこれに該当します。

 

注意しなければならないのは、こうした資料を添付しないまま「期間が足りなかった」と一方的に主張しても、裁判所の判断は得られにくいという点です。理由に客観性があるか、証拠が明確であるかが判断基準の中心となります。

 

申立書の記載においては「感情的な表現」や「主観的な印象」を強調しすぎないことも重要です。「突然の出来事で戸惑った」「心の整理がつかなかった」などの表現は理解される一方で、法律的な判断には直接結びつかないこともあります。そのため、第三者が読んでも状況が把握できるよう、具体的かつ論理的に記載する必要があります。

 

提出先は、原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。郵送での提出も可能ですが、書類の不備があると再提出を求められることがあるため、可能であれば事前に電話等で必要書類や形式の確認をしておくと安心です。

 

申立てには収入印紙や郵便切手も必要です。一般的には800円分の収入印紙と、家庭裁判所指定の郵便切手を添付することが多く、これらの費用は変更されることもあるため、事前に管轄裁判所の最新情報を確認しましょう。

 

熟慮期間の延長申立ては一見すると単純に見えるかもしれませんが、実際には法律的な判断が強く関与する手続きです。誤解や不備を避けるためにも、専門家との連携や準備段階でのチェックが不可欠です。行き詰まる前に的確な対処を進めることが、相続放棄を円滑に行うための重要なステップといえます。

まとめ

相続放棄を検討する際、最も重要なのは期限を正確に把握し、必要な手続きを適切な時期に行うことです。相続人が被相続人の死亡を知った時から熟慮期間が始まるとされ、その中で財産や債務の調査を進めた上で、家庭裁判所への申述を行うか否かを判断する必要があります。しかし、実際には相続財産の存在や内容を把握するのに時間を要するケースが多く、期限内の決断が難しいと感じる方も少なくありません。

 

そうした中で、期間の延長が認められる事情があることを知っておくことは大きな意味を持ちます。相続財産の全体像が死亡時点では明確でなかった場合や、借金の存在を後から知った場合など、やむを得ない理由があれば、熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てることが可能です。その際には、申立書の記載内容や添付資料の妥当性が判断材料とされ、審査の結果によっては受理されない場合もあるため、慎重な準備が求められます。

 

期間延長の申立ては単なる書類提出ではなく、合理的な理由とともに明確な証拠資料が必要とされます。戸籍謄本や通知書、調査結果などが有効とされることが多く、記載の方法一つで結果が変わることもあります。こうした細かな点を見落とさず、相続放棄に関する制度と流れを事前に理解しておくことが、損失回避に繋がります。

 

相続や放棄という言葉の裏には、家族の生活や財産の在り方に深く関わる問題が隠れています。判断を先送りしたことで手続きが複雑になったり、債務の引き継ぎに発展してしまう事例も少なくありません。自分自身や親族を守るためにも、相続放棄の期限や申述の進め方について正しい知識を持ち、早めの行動を意識していくことが何よりも重要です。

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よくある質問

Q.相続放棄の期間はいつから数えるのが正しいですか
A.相続放棄の期間は、相続人が被相続人の死亡と相続の開始を知った日から数えて始まります。これは民法上の熟慮期間にあたり、家庭裁判所への申述が期限内に行われなければなりません。実際には、死亡届を提出した日や死亡診断書を受け取った日が起算点として判断されることが多く、相続財産の存在を知った時点からカウントされると誤解している人も少なくありません。起算点の認識違いによって、申述が期限を過ぎてしまうケースもあるため、正確な日付の記録と家庭裁判所への相談が不可欠です。

 

Q.相続放棄の申述に必要な書類はどれくらいありますか
A.申述手続きに必要な書類は複数あります。代表的なものとしては、申述書、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本、申述人の戸籍謄本、住民票、そして収入印紙や郵便切手などです。家庭裁判所の管轄によって細かい要件や添付書類が異なるため、必ず提出先の裁判所の案内を確認してください。提出に不備があれば受理されないこともあるため、弁護士や司法書士に相談して必要書類の準備を進めることが確実です。誤った書類や不足があると、手続き全体が無効となるリスクもあります。

 

Q.相続放棄の期間を延長できる理由にはどのようなものがありますか
A.熟慮期間の延長が認められるには、相続財産の全体像が死亡後すぐに判明しなかった場合や、債務の存在を後日知ったケースなど、合理的理由が必要です。相続人が遠方に住んでいたり、被相続人と疎遠で死亡をすぐに知り得なかった事情がある場合、申立てによって家庭裁判所が延長を認める可能性があります。この期間延長の申立書には、理由と状況を明記し、証明資料として郵便物や金融機関からの通知書などを添えると判断が有利になる傾向があります。曖昧な理由では認められないため、慎重に書類を整える必要があります。

 

Q.相続放棄したいが期限を過ぎてしまった場合はどうすればいいですか
A.熟慮期間を過ぎてしまった場合でも、放棄が不可能になるわけではありません。状況次第では申立てが受理される余地があります。相続財産の存在を全く知らなかったことを証明できる場合や、通知が届いた時期を証拠として示せる場合には、申述が受け入れられる可能性があります。ただし、相続財産の一部を処分したり、借金を返済したりするなどの行為があると、単純承認とみなされ、放棄が認められないこともあります。相続放棄が否定された場合には、限定承認という選択肢もあるため、早急に法律相談を受けることが望ましい対応といえます。

会社概要

会社名・・・鶴見総合法律事務所

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