相続放棄を自力でやる人の目的と背景!どんな人が自分でやるべきか?
相続放棄を「自分でやる」と決める人は少なくありません。家庭裁判所へ提出する書類の多くが自身で収集可能であり、インターネット上でも情報が手に入る時代だからこそ、「専門家に依頼せず費用を抑えたい」と考える人が増えています。ただし、その背景には明確な動機があり、すべての人に適しているわけではありません。
まず多く見られるのが、「費用負担を抑えたい」という金銭的理由です。相続放棄は、原則として被相続人の死亡を知った時から3か月以内に申述する必要があります。この申述には、申述書や戸籍謄本などの必要書類の提出が求められますが、これらを自力でそろえれば、司法書士や弁護士への依頼費用を節約できます。実際、家計に余裕がない人や、相続財産が明らかにマイナス(債務超過)である場合、「できることは自分で」と考えるのが自然です。
次に多いのは、「内容が比較的シンプルである」と判断したケースです。たとえば、被相続人が親で、財産が負債のみである場合、相続放棄の意思は明確であり、調査や書類の収集も限定的で済むことが多いため、自分で完結できると考える人がいます。
また、家族間の関係が円満であり、利害の対立が発生しない場合も、自力での手続きを選びやすくなります。逆に、遺産分割や相続順位などで争いが予想される場合は、専門家による法的整理が求められるため、自力では困難です。
このように、「誰が」「なぜ」自分でやるのかには明確な意図が存在します。しかし、あくまで自己判断で進める以上は、誤解や不備による申述却下リスクもあります。特に相続放棄照会書が送付された場合、その記載内容によって受理が左右される可能性もあるため、知識の浅さが致命的にならないよう慎重に対応する姿勢が不可欠です。
司法書士と弁護士の違いと選び方!費用・相談範囲・対応力で比較
相続放棄の手続きを専門家に依頼する場合、多くの人が迷うのが「司法書士か弁護士か」という選択です。この違いを明確に理解することで、自分にとって最適なパートナーを選ぶ手助けとなります。
まず、司法書士は主に「書類作成」と「手続き代行」に強みがあります。相続放棄申述書の作成や家庭裁判所への提出書類の整備、必要書類の案内などが主な業務範囲です。対して、弁護士は「法律相談」「代理人としての交渉力」「トラブル対応」に長けており、複雑な相続問題を含む場合や他の相続人との紛争が想定される場合に、強い味方となります。
司法書士と弁護士の違い
| 比較項目
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司法書士
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弁護士
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| 主な業務範囲
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書類作成、家庭裁判所への申述補助
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法的助言、交渉、代理人としての対応
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| 対応可能範囲
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照会書への対応はアドバイス程度
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法廷での代理、紛争対応まで可能
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| 費用相場
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約3~5万円程度
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約5~10万円以上
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| 向いている人
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内容が明確で書類サポートのみ必要な人
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争いや複雑なケースがある人
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| メリット
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費用を抑えつつ専門的なサポートが可能
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幅広い対応が可能でトラブルにも強い
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選び方のポイントとしては、相続財産の調査が完了しており、特に紛争も見込まれず、単に「必要書類の作成」や「提出書類のチェック」だけを希望するのであれば、司法書士のサポートで十分といえるでしょう。一方で、相続人間の意見の対立や、相続放棄の前提となる情報が曖昧な場合は、トラブルの火種を避ける意味でも弁護士への相談が安心です。
また、弁護士の場合は「借金返済義務の有無」や「限定承認との比較検討」など、より高度な法的判断が必要な場面でもアドバイスを受けられるため、将来のリスク回避という意味での安心感が異なります。
自分でできるケースとやめた方がいいケースの線引き
相続放棄は自分でできる手続きではありますが、誰もが安全に完了できるとは限りません。誤った判断は「単純承認」とみなされ、借金などの相続財産を引き継いでしまうリスクすらあるため、慎重な見極めが求められます。
まず、自分でできるケースとしては、以下のような状況が挙げられます。
【自分でできるケース】
- 被相続人に借金があり、遺産が明確に負債のみである
- 相続人が一人で、手続きの混乱が生じにくい
- 相続開始から3か月以内で、必要書類の取得に問題がない
- 家庭裁判所へのアクセスが良く、平日の日中に動ける
- 照会書の対応に不安がない、文書作成が得意
一方、以下のようなケースでは、自己判断での相続放棄はリスクを伴い、やめた方が良いとされています。
【やめた方がいいケース】
- 被相続人の財産状況が不明で、債務と資産が混在している
- 他の相続人と対立がある、あるいは複数人が関わる相続
- 相続放棄の期限が迫っており、必要書類が間に合わない可能性がある
- 相続財産の一部を処分・使用してしまった可能性がある
- 裁判所からの照会書に適切に対応できる自信がない
相続放棄の成否を分ける最大のポイントは「誤解と不備の回避」です。相続放棄申述書には、被相続人との関係性や、申述の理由を記載する必要がありますが、不適切な表現や記載漏れは申述却下につながります。また、戸籍謄本や除籍謄本、住民票除票などの必要書類の不備や取得漏れも重大なミスとなります。
判断材料
| 項目
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自分でできる場合
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やめた方がよい場合
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| 財産の状況
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明確に負債中心
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内容が不明または混在
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| 相続人の数
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一人または協力的
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複数で対立あり
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| 手続きの期限
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余裕がある
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期限まで数日しかない
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| 書類準備
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自分で収集可能
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書類取得に不安あり
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| 法的判断
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簡易で明白
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限定承認との比較が必要
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このように、自分で進めるか否かは、状況次第で明確に線引きが可能です。もし少しでも不安があるならば、後悔のない選択のためにも、早めに司法書士や弁護士などの専門家に相談することが賢明です。相続放棄は「正確性」と「迅速性」が命。自己判断による手続きミスは、時に高額な負担へとつながることを忘れてはなりません。