相続の預り金で失敗しないために今知るべき注意点と正しい手続方法のポイント

query_builder 2025/05/06
著者:鶴見総合法律事務所
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相続が始まる前に、親の預金を引き出すことにためらいを感じていませんか。実際、死亡直前の預金の取り扱いは税務署の目が光るポイントであり、贈与税や相続税の対象とみなされるケースも少なくありません。特に、口座から現金を引き出した時期や使途に不透明さがあると、後に相続人間の協議が難航したり、税務調査が入るリスクが高まるのです。

 

さらに、葬儀費用や介護にかかった出費を立て替えた場合、その記録が不十分だと正当に控除されないこともあります。例えば、実際に相続財産から現金が引き出されたにもかかわらず、領収書や支払い明細がなければ、税務署から疑念を持たれる可能性があります。被相続人名義の通帳を保管する立場にあった人が、無断で預貯金を移動したと判断されれば、名義預金や贈与とされるリスクもあります。

 

このように、相続開始前後の預り金や預金の管理は極めて繊細で、適切な手続と記録が求められます。この記事では、相続に関するお金の取り扱いで損失や誤解を防ぎ、司法書士や弁護士を交えた透明性のある管理方法について、実務経験に基づいた情報をわかりやすくお届けします。信頼性を重視し、税務や遺産分割の現場で起こる典型的なトラブルとその対策まで網羅しているので、最後まで読むことで相続人として必要な知識を安心して得ることができます。

 

相続問題の解決をサポートします - 鶴見総合法律事務所

鶴見総合法律事務所では、法律に関する幅広いサービスを提供しております。特に相続に関する問題については、専門知識と豊富な経験を持つ弁護士が親身になってサポートいたします。相続人間でのトラブルや遺言書作成、遺産分割協議など、複雑な問題にも丁寧に対応し、円満解決へ導きます。どんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。私たちは、お客様の大切な問題をしっかりと解決できるよう、全力でサポートいたします。

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相続時の「預り金」とは何か?贈与や名義預金との違い

預り金とは何か?相続の場面で誤解されやすいポイント

預り金とは、他人から一時的にお金を預かっている状態を指すものであり、贈与や貸与とは異なる法的性質を持ちます。相続においてはこの区別が重要であり、正しく理解しておかないと、思わぬトラブルや課税対象となるリスクがあります。預り金は、本来返還を前提とした資産であるため、相続財産には含まれないという誤解を持つ方も多いですが、管理の仕方や証明の有無によって、相続税の対象となる可能性があります。

 

例えば、親の口座から子の口座へ移されたお金があった場合、子が「預かっているだけ」と主張しても、その証拠がなければ贈与と判断される可能性があります。税務署はこのような預金移動に対して厳格な視点を持っており、「誰が管理していたか」「お金の使用目的は何か」「通帳の保管状況」などを調査の対象とします。預り金であることを証明するには、預かり証や覚書の作成、出金記録の管理などが必要です。

 

また、親が認知症になった後に家族が代わりに預金を管理していた場合も注意が必要です。たとえ善意であっても、記録が不十分であると相続財産として加算されてしまう可能性があります。さらに、死亡直前に預金を引き出していた場合、それが相続税の回避目的と判断されると、課税対象になることもあります。預り金の正しい管理と証明方法を理解することが、相続税トラブルを未然に防ぐ第一歩です。

 

相続トラブルを避けるために知っておきたい預り金の基礎知識

預り金をめぐる相続トラブルは年々増加傾向にあります。特に親が高齢になり、認知症や身体的な事情により自身で金銭管理ができなくなった場合、子が代わりに管理する機会が増えています。しかし、そのお金が「親のために預かっていた」のか「贈与を受けた」のか、家族間でも認識が曖昧なまま放置されてしまうことが多いのです。このような状況が、後々の遺産分割協議や税務申告の際にトラブルへと発展します。

 

兄弟間でトラブルになる典型的な例として、親の通帳を長男が管理しており、亡くなった時点で多額の現金が引き出されていたケースがあります。他の兄弟が「勝手に使ったのではないか」と疑念を持ち、遺産分割協議が長期化した事例もあります。こうした事態を防ぐためには、金銭の出入りを明確に記録し、第三者にも説明できるようにしておくことが求められます。

 

預り金の存在を示すための書類には、預かり証、覚書、収支表などがあります。これらをしっかり整備しておくことで、万が一の相続時に「これは贈与ではなく預り金だった」と説明する根拠になります。記録が不十分であったり、口座の名義と使用実態が一致していなかったりすると、税務署から贈与認定されるリスクが高くなります。

 

下記は、預り金を正しく管理・証明するために整えておくべき主な書類やポイントをまとめた一覧です。

 

必要な項目 内容の詳細
預かり証 お金を預かった旨と返還予定などを記載した書類
覚書 預かりの目的や金額、管理方法を家族間で共有する合意書
使用履歴の記録 介護費・医療費・生活費などの出金内容と使途の明細
通帳・振込明細書類 預金移動の記録や資金源を証明するもの
口座名義と印鑑の管理状況 誰が通帳や印鑑を保管していたか、物理的な管理状況の把握

 

こうした情報を整えておくことは、税務調査や相続人同士の紛争に備える上で極めて重要です。事前に準備を進めておくことで、後悔や誤解のない相続を実現することができます。

 

親のお金を預かるときにやっておくべき書類と準備とは?

預り金に関する覚書を作る意味とその効果について

親から金銭を預かる場面では、将来的な相続トラブルや贈与とみなされるリスクを避けるために、預り金に関する覚書を作成しておくことが極めて重要です。預り金とは一時的に管理を任されたお金であり、贈与や遺産とは異なりますが、法的な証拠がなければ税務署に贈与と誤解される可能性があります。

 

覚書を作成することによって、双方の合意が明文化され、預かっている金額や使途、返還の条件などを明確にすることができます。これにより、親が亡くなった後に他の相続人から「勝手に使われた」といった誤解を受けにくくなります。また、覚書には署名捺印を添えることで、第三者機関に対しても証明力を持たせることが可能になります。

 

実際の相続時にトラブルが起こる典型的な原因は、親の口座から子が出金していたことに関して、その正当性を証明できないことです。覚書があれば、出金の目的が生活費や医療費、介護費として使用されたことを説明しやすくなります。この点において、覚書は税務署への説明責任を果たす有効なツールとも言えます。

 

また、覚書を作成することで、預かる側の心理的負担を軽減するという利点もあります。親の意思に基づいて金銭管理をしていることが文書として記録されているため、後ろめたさや不安なく対応ができるようになります。さらに、覚書には資金の原資、使用予定、管理口座など具体的な情報を記載しておくことで、書面の信頼性が一層高まります。

 

万が一、将来訴訟に発展することがあった場合も、覚書があることで証拠資料として機能します。特に相続財産に関わる預り金は「相続財産ではない」と主張するには、明確な根拠が必要であり、その意味で覚書は非常に有効です。

 

預かり証はどのように書く?正しい書き方とテンプレートの紹介

預かり証は、金銭の授受を記録するための書類であり、親からお金を預かったときには必ず用意しておくべきです。この書類を作成することで、預かった金額が返済義務のある性質であることを明確にし、贈与と混同されるのを避ける効果が期待できます。税務上の誤認を避けるためにも、正確な記載が必要です。

 

まず、預かり証に記載すべき基本項目には、預かった日付、金額、使途、返還予定、保管方法、署名および押印があります。特に重要なのは、どのような目的で預かったのか、いつまでにどのように返還するのかという点を明記することです。これにより、税務署や他の相続人に対して、預かり金の性質が明確になります。

 

預かり証のテンプレートはインターネット上にも数多くありますが、信頼性の高いものを使用するか、専門家に相談して作成することが望ましいです。テンプレートを利用する際は、必ず個別の事情に合わせて必要な項目を追加・修正してください。実際の運用でよく使われる内容として、預金の引き出し元口座や管理口座の情報、日常的な使用の範囲なども記載しておくと、より説得力のある書類になります。

 

また、署名や押印に関しても、親本人だけでなく、子や第三者の署名を加えることで、公平性や合意の正当性を高めることができます。相続が発生した際、口頭のやりとりだけでは法的に認められないケースがあるため、預かり証という書面の整備は不可欠です。

 

一部では、通帳や印鑑を預かっているだけで管理しているつもりの人もいますが、記録がなければ第三者から不正利用と見なされることがあります。このような事態を避けるためにも、日付ごとの入出金に関する簡単なメモとともに、預かり証を活用した管理が推奨されます。

 

税務調査で問題になる預り金の典型例とその対策

贈与税の対象とみなされるケースとは?税務署の視点で考える

親から子へ資金を渡す際に、預かっているだけという認識であっても、税務署はその実態に着目して贈与とみなすことがあります。特に問題となるのは、預り金に関する書面や証拠が整っていない場合です。通帳の名義が子になっており、使用目的が不明確であると、それだけで贈与と判断される可能性があります。贈与税は財産の無償移転に対して課税されるため、親子間でも一定の条件を満たさなければ課税対象となります。

 

税務署が注視するポイントは、まず資金の出所です。親の口座から定期的に子の口座に送金されている履歴があり、その後の使途に返還の痕跡がなければ、贈与とみなされやすくなります。さらに、贈与契約書が存在せず、相続発生後に多額の現金が子の口座に残っていた場合は、相続税の調査対象にもなります。預かり金であるならば、その根拠を証明する書類が不可欠です。

 

また、親の意思能力に問題があった場合、たとえば認知症を患っていたときに大きな資金移動があった場合などは、意思確認ができないとして贈与そのものが無効とされる可能性があります。そのような資金の行方については、子が管理していたことを証明する必要があり、その手段として預かり証や覚書の整備が重要となります。

 

税務署は預金や現金の移動だけでなく、贈与と認定された場合に申告がなされていたかどうかも調査します。申告漏れがあると、加算税や延滞税の対象となる場合があるため、トラブルを未然に防ぐには、事前の対策が不可欠です。

 

名義預金とされてしまう危険性を回避するにはどうする?

名義預金とは、親が資金を出しながら子の名義で管理されている預金のことを指します。これは、表面上は子の財産であるように見えても、実質的には親の財産であると判断されるものであり、相続時に相続財産として加算される対象となります。税務署はこのような名義預金の存在を見抜くため、通帳の管理状況、印鑑の保管者、入出金の内容、贈与の意思確認などを詳細に調査します。

 

名義預金とみなされる典型的な状況としては、親が子名義の口座に定期的に入金をしていたものの、子がその存在を認識していなかった、あるいは使っていなかったという場合です。この場合、子の管理下にないという点から、実質的には親の財産と判断されます。これが相続時に発覚すると、申告漏れとされるリスクがあります。

 

このリスクを回避するためには、まず子の名義で口座を開設する場合には、明確に贈与の意思があることを証明する必要があります。そのためには、贈与契約書の作成が推奨されます。また、贈与後の通帳や印鑑は子が保管し、実際に使用する実態を持たせることが重要です。単に名義だけでなく、管理実態を証明できるかどうかが判断の分かれ目です。

 

一方で、親の介護費や生活費として一時的に預かったお金を子の口座に入れて管理するケースもありますが、この場合にはあらかじめ親の意思と目的を明記した覚書や預かり証の作成が有効です。また、入出金の記録や領収書の保管を徹底することで、名義預金との混同を防ぐことができます。

 

税務署が名義預金と判断するのは、実態と書面の整合性が取れていない場合です。したがって、預金の使途が生活費、医療費、介護費用であることを明確にし、支出の記録を日常的に残しておくことで、名義預金として扱われるリスクを軽減できます。

 

預金移動が贈与と誤認されないための注意点とは?

親の預金を子の口座に移すという行為は、介護や生活支援の目的で行われることが多いですが、その際に書類や管理の記録がないと、税務署に贈与と誤認される危険があります。特に相続発生時の調査では、過去数年にわたる預金移動が精査され、時期や頻度、金額、そして使途について詳しく確認されます。

 

預金移動が贈与と見なされるかどうかの判断材料として、第一に挙げられるのが資金の名義と移動時期です。例えば、親が亡くなる直前に大きな金額を子の口座に移していた場合、その資金が返済されていない、もしくは使途が明確でない場合には、贈与と判断されることがあります。特に頻繁な移動や定額の振込があると、定期贈与と見なされる可能性が高まります。

 

また、贈与に該当しないと主張するには、移動の目的や返還予定などを文書で残しておくことが必要です。預り金に関する覚書や預かり証がその手段として有効であり、これにより税務署に対してお金の管理実態を明確に示すことができます。さらに、親の口座から出金された後に、現金で受け渡しを行っていた場合には、追跡が困難となるため、銀行振込など記録の残る方法で移動することが推奨されます。

 

誤認を避けるためには、日々の資金の出入りについて明細を残し、支払いの証明書類を保存しておくことが重要です。預金移動の理由が生活費や医療費の支出である場合は、領収書や利用明細を添付しておくと安心です。

 

以下は、税務署が預金移動の際に確認する主なポイントと、その対策を整理した一覧です。

 

確認される項目 説明と対策内容
移動の目的 医療費・生活費・介護費など正当な支出かを明記する
移動の時期と頻度 死亡直前や定期的な入金は贈与と見なされやすいため注意が必要
管理者の実態 誰が口座と印鑑を管理していたか、実質的な所有者を示す証拠が必要
書面による証明 預かり証・覚書・収支記録などで移動の正当性を明文化する
使用履歴の明示 実際に支出されたことを証明するため、レシートや領収書を添えて保管する

 

これらの対策を講じておくことで、預金移動が贈与と誤認されるリスクを大きく減らすことができます。家族間の金銭管理であっても、税務署は第三者的な視点で実態を調査するため、客観的に説明できる記録と書類が何よりの防衛策となります。

 

預り金の正しい管理方法と実践的な運用

専用口座を使った預り金の管理方法とメリット

親のお金を預かる際に最も重要なのは、家計との明確な分離と記録の透明性を保つことです。そのためには、預り金専用の銀行口座を設けることが非常に有効です。専用口座を利用することで、日常生活費と預り金が混在することなく、預け入れや出金の記録を明確に管理できます。このような運用は、後々の税務調査や相続時のトラブル防止にも役立ちます。

 

まず、口座の名義ですが、一般的には預かる側の名義で開設し、通帳には「親の介護費管理用」などのメモを加えておくことが望ましいです。これにより、預金移動が不明瞭になりにくく、贈与税の対象とみなされるリスクも低減されます。また、入金の都度、振込人の名義と目的を明記することがポイントです。

 

さらに、出金時も同様に、出金理由や支払い先を明細付きで残しておくことで、帳簿としての効力も得られます。これらの履歴は、金融機関の通帳記録だけでなく、補足資料としてエクセルやノートなどに日別でまとめておくとよいです。法的に預り金の性質を証明できる証拠として、有力な裏付け資料になります。

 

このように、専用口座を用いた運用は、記録の一貫性を保ち、贈与や名義預金の疑いを晴らす有効な手段となります。また、将来的に介護費や葬儀費に使われたことを明確に示す資料となるため、相続人間の誤解や不信感を避けるためにも非常に有効です。

 

家計と預り金を混同しないためのポイントとは?

預り金と家計費を同一口座で管理していると、資金の流れが不明確になり、相続時や税務署の調査で問題となるケースがあります。特に親の年金や預貯金を生活費に充てながら、その中から介護費用も支払っているような場合には、どの支出が誰のためのものか判別しにくくなるため注意が必要です。

 

日々の生活の中では、「親の医療費」「生活補助費」「預り管理費用」など、名目が入り混じることが多いため、使用した用途を明確にしないまま現金を出し入れすることが避けられがちです。しかし、このような状態こそが将来的に名義預金や贈与と誤解される原因となります。

 

まず意識したいのは、生活費と預り金の支出先を物理的に分けることです。例えば、食費や光熱費などの共有支出は家計口座から支出し、介護サービス費用や通院交通費などの個別支出は預り金専用口座から出すようにすることで、金銭の出所が明確になります。

 

また、使用記録は手書きのノートでも構いませんが、支払先や目的を都度記録し、通帳と照合できるように保管しておくと、後日の証明資料としても有効です。これにより、被相続人の死亡後に相続人間での不信感が生まれるのを防ぎ、遺産分割協議や税務署への申告時にもトラブルを未然に防ぐことができます。

 

家族で金銭管理を行う際には、「誰が何の目的でいくら預かったか」を明文化することが信頼関係の維持にもつながります。たとえ家族間であっても、金銭のやりとりには書類や記録が必要であるという意識を持つことが大切です。

 

司法書士や弁護士に管理を依頼する場合の利点と手順

預り金を第三者である司法書士や弁護士に依頼して管理してもらう方法は、非常に高い透明性と法的安心感が得られる選択肢です。特に複数の相続人が関係するケースや、家族間での信頼関係が不安定な場合には、専門家を介在させることで不必要なトラブルを回避しやすくなります。

 

司法書士や弁護士が関与する場合、その業務には明確な手続きが必要です。まずは業務委託契約を締結し、管理する預り金の性質、使用用途、管理期間などを文書で定めることになります。そのうえで、専用の預り金口座が開設され、そこに資金が預け入れられる形となります。通常は業務用に確保された信託口や預り金専用口座が利用され、本人とは別管理の体制が敷かれます。

 

この手続きにより、通帳の名義や資金の移動記録が全て明確に残るため、相続人間の疑念や後々の税務署からの指摘にも毅然と対応できるようになります。また、定期的な資金の使用報告や残高証明書の提出を求めることができるため、預り金の使途が公的にも可視化されることになります。

 

さらに、専門家に預り金の管理を依頼することで、仮に生前贈与や遺産分割に関する調停、訴訟に発展した場合でも、法的に有利な証拠を確保できる点も大きなメリットです。第三者が管理した記録は主観的なものではなく、客観的な資料として税務署や裁判所でも認められることが多いため、信頼性の高い証明資料として機能します。

 

相続開始前後に預金を引き出す際の注意点を総整理

親が亡くなる前に預金を引き出すと法的に問題か?

親が生存中に預金を引き出す行為は、家族として当然の行動と思われがちですが、法律上は慎重な対応が求められます。たとえば、親の同意がなく本人の意思確認も取れていない状態で多額の預金を引き出した場合、贈与とみなされて後日税務署からの調査対象となる可能性があるためです。特に認知症や病気で判断能力が低下している状態での出金は、親の利益を損なうと判断され、トラブルの火種になりかねません。

 

また、引き出した資金の使途が不明瞭な場合、他の相続人から「不当な先取り」と主張され、遺産分割協議が難航する要因になることがあります。預金の移動や出金には明確な理由が必要であり、その際の記録や親からの依頼があったことを示す文書も重要になります。口頭でのやり取りだけでは証拠能力が弱く、贈与と誤解されるリスクが高まります。

 

さらに、税務調査の際に贈与税の申告がなかったことを指摘され、追徴課税の対象になることもあります。親の口座から子の口座へ資金が移動していた場合、その経緯が説明できないと贈与税の対象になることも否定できません。親子間であっても、税務署は形式ではなく実態を重視する姿勢をとっているため、甘く見てはいけません。

 

このようなリスクを避けるためには、出金する前に親の意思確認をしっかりと取り、可能であれば預かり証や覚書などの書類を用意しておくことが推奨されます。また、引き出した資金の使途についても、通帳やレシートなどで証拠を残しておくことが大切です。日常の生活費や介護費として使用する場合でも、後日説明ができるよう準備しておくべきです。

 

死亡前の出費(葬儀・介護)をどう記録するべきか?

親が重篤な状況や危篤状態になった場合、葬儀費用や介護費用が先に発生することがあります。このような状況下で発生した支出は、相続後に精算の対象になるため、支出記録を正確に残しておくことが極めて重要です。特に、親の資産から出費した場合は、他の相続人から「使い込み」と誤解されないようにする配慮が求められます。

 

介護費用については、訪問介護や施設利用など多岐にわたります。そのため、支払先、支払い日、内容を記録した一覧表や領収書を整理して保管しておくことが必要です。また、通帳から直接支払った場合でも、出金の目的が分かるようにメモを添えておくと後のトラブルを回避しやすくなります。

 

葬儀費用についても同様で、どの業者にいくら支払ったかだけでなく、祭壇、返礼品、香典返しなどの内訳も整理することが求められます。これらの情報が曖昧だと、相続人間で費用負担について不公平感が生じ、遺産分割時に感情的な対立が起こりやすくなります。

 

さらに、死亡診断書の取得から火葬、納骨までの流れにおいても、発生した費用はすべて記録に残すことが大切です。介護費用や葬儀費用が高額になることもあるため、支出の証明が不十分だと、後に「不当な支出」として相続人間の紛争に発展するリスクもあります。

 

このような支出を記録する方法としては、エクセルなどの一覧表に日付・支出内容・金額・支払先・関連書類の有無などを記録するのが有効です。紙のノートでも構いませんが、できるだけデジタル化しておくと、他の相続人とも共有しやすくなります。記録は1日でも早く始め、継続的に更新することが望ましいです。

 

口座凍結後の手続きとトラブル防止のための備え方

親が亡くなると、銀行口座は速やかに凍結され、預金の出金ができなくなります。これは相続人の間でのトラブルを未然に防ぐための措置ですが、実際には生活費の支払いや葬儀費用の捻出に困るケースが少なくありません。したがって、口座凍結後の手続きや対応方法について、事前に理解しておくことが重要です。

 

まず、銀行口座が凍結された場合、解除するには相続人全員の同意書や遺産分割協議書が必要になります。この手続きは時間を要することが多く、すぐに預金を使うことは難しいため、事前に備えておくべきです。とくに、一部の相続人と連絡が取れない場合や、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所での調停を経る必要が出てくることもあります。

 

このような事態を防ぐには、親が元気なうちに信頼できる家族に生前贈与や任意後見制度を活用するなど、資産の取り扱いについて合意を得ておくことが効果的です。また、口座の名義変更がスムーズに進められるよう、必要書類を事前に整理しておくと安心です。通帳、印鑑、本人確認書類などは一括管理することが望ましいです。

 

さらに、相続開始後にトラブルが起きないよう、あらかじめ銀行ごとの対応手続きの違いを確認しておくことも大切です。たとえば、金融機関によっては、遺産分割協議書の形式や本人確認書類の要件が異なる場合があります。このような差異を事前に知っておくことで、手続きの遅延や再提出といった無駄を避けることができます。

 

以下は、口座凍結後に必要な一般的な書類の一覧です。

 

書類名 用途 説明内容
戸籍謄本一式 相続人確認 被相続人の出生から死亡までの記録を提出
遺産分割協議書 相続内容の合意証明 相続人全員の同意と署名が必要
相続人全員の印鑑証明書 協議書の真正性を担保するため 市区町村発行、協議書とセットで使用される
被相続人の通帳と印鑑 残高や履歴確認 凍結解除に必須。紛失している場合は再発行手続
本人確認書類 銀行の手続き要件 運転免許証やマイナンバーカードなどが該当

 

まとめ

相続に関する預り金の取り扱いは、税務署による税務調査や相続人同士のトラブルを防ぐためにも、正確で透明な管理が不可欠です。特に、親が亡くなる前に預金を引き出した場合、その使途や時期、金額が明確でなければ、贈与税の対象とされるリスクや、他の相続人から疑義を持たれる可能性が高まります。生前に支出した介護費や葬儀費を証明するためには、領収書や契約書、銀行の振込記録など客観的な資料を残すことが重要です。

 

また、死亡後に口座が凍結された際、相続人が手続きを円滑に進めるには、被相続人の戸籍や相続関係説明図、遺産分割協議書などの法的書類を準備する必要があります。銀行によっては手続きが煩雑で、時間がかかることも多いため、専門家への相談や司法書士・弁護士のサポートを活用することで、不要なトラブルや手続きの遅延を避けることができます。

 

特に注意すべきは、相続前後の預金移動における「名義預金」や「贈与とみなされる行為」です。税務署は、引き出された預金の使途や記録が不十分な場合、税務調査により追徴課税を行う可能性があります。相続財産の評価に影響する項目でもあり、相続税や相続分の計算にも直結するため、適正な記録と説明責任が求められます。

 

この記事で紹介した手順や管理方法を実践することで、相続財産としての預り金に関する誤解やリスクを最小限に抑えることができます。専門家のサポートを受けながら、早い段階から準備を進めることが、安心かつ円滑な相続の第一歩となります。預り金の正しい扱いは、将来のトラブル回避だけでなく、相続人全員の信頼関係を守る大切な鍵となります。

 

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よくある質問

Q. 親の預り金を生前に使った場合、相続財産として申告が必要ですか?
A. はい、親から預かったお金を生活費や介護費などに使用した場合でも、その使途を証明できる書類がなければ、税務署から贈与や相続財産とみなされる可能性があります。たとえば年間を通じての現金支出が預金の減少と一致しないと、税務調査の対象になることもあります。特に被相続人の死亡前後に不自然な出金が確認されると、相続人全員に対して協議や説明責任が求められるため、通帳コピーや領収書などをしっかり保管しておくことが重要です。

 

Q. 預り金として親のお金を管理する場合、名義は誰の口座にすればいいですか?
A. 預り金専用の口座を作成する場合は、原則として被相続人名義の口座を維持し、その中で預金管理を行うのが最も安全です。家族の口座を使って管理していると、税務署から名義預金と見なされ、相続財産として相続税の課税対象になることがあります。特に相続人が複数いる場合には、通帳管理や出金の正当性を明示するため、司法書士や弁護士と連携した管理体制を整えることが推奨されます。

 

Q. 税務調査で預り金が問題になるのはどんなときですか?
A. 税務署が預り金を問題視する主なケースは、相続前に多額の現金が引き出されていたり、贈与税の申告がなされていない場合です。たとえば、死亡の直前6か月以内に数百万円単位の出金があると、税務調査の対象となり、相続税の追加課税が発生することがあります。口座の出入金履歴、領収書、契約書などをそろえておくことで、預り金の正当性や使途を示すことが可能です。預金の評価や分割にも影響するため、法的な対応を事前に準備しておくべきです。

 

Q. 預り金の管理を兄弟間で共有する場合、どのような書類が必要ですか?
A. 相続人が複数いる場合、預り金の管理を一人で行うとトラブルに発展することがあります。そのため、兄弟全員での協議により、覚書や預り金契約書を作成することが望ましいです。具体的には、誰が預かり管理するのか、使途や出金時の承認方法、定期的な報告の有無などを記載した文書を残すことで、後の争いを未然に防ぐことができます。特に不動産やその他の相続財産と合わせて分割する場合、文書の明確さが相続分の評価や相続税申告の信頼性に直結します。

 

会社概要

会社名・・・鶴見総合法律事務所

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