現に占有がある場合の保存・管理のポイント
相続放棄をした場合でも、相続財産を現に占有している場合には、財産を適切に保存するための対応が必要となることがあります。
例えば、建物の施錠、雨漏りや破損による被害の拡大防止、火災や漏水などの危険を防ぐための確認、第三者への被害を防止するための応急対応などです。
ここで重要なのは、保存と処分を区別することです。
相続財産の価値を維持するための最低限の対応と、財産を自分のものとして取得・処分する行為では意味が異なります。
例えば、壊れた屋根から雨水が入り続けている場合に被害の拡大を防ぐための応急対応をすることと、故人の家財を売却して売却代金を自分のものにすることは同じではありません。
迷う場合には、処分や持ち出しをせず、現況を写真や目録で記録したうえで、必要な対応について確認するのが安全です。
- 保存に必要な範囲の対応にとどめる
- 無断で売却・廃棄・持ち出しをしない
- 鍵や重要書類などの保管状況を記録する
- 財産の現況を写真やメモで残す
- 修繕などを行った場合は領収書などを保管する
占有と評価されやすい財産や行為の事例
相続放棄後に「現に占有している」と評価されるかどうかは、財産について実際にどのような支配・管理をしているかなど、具体的な事情を踏まえて判断されます。
例えば、故人の自宅に引き続き居住している、鍵を保管して自由に出入りしている、故人の家財を自宅で保管しているといったケースでは、占有が問題になりやすいでしょう。
一方で、管理会社など第三者が鍵を管理しており、本人には自由に出入りする権限がない場合などは、事情が異なります。
なお、単に一度現場を確認した、必要な連絡のために立ち入った、といった一回限りの行為だけで直ちに「占有」と判断されるとは限りません。実際の支配状況を個別に確認することが重要です。
管理義務が終了するタイミング
相続放棄後の保存・管理については、相続財産を現に占有している人から、相続財産を引き継いで管理する立場の人などへ適切に引き渡すことが重要です。
例えば、後順位の相続人が相続人となって管理することになった場合や、相続財産清算人が選任され、その人へ財産を引き渡す場合などが考えられます。
ただし、「後順位相続人がいるから自動的に管理義務が終わる」と一律に考えるのは避けましょう。実際に誰が管理することになったのか、財産の引渡しがどのように行われたのかなど、具体的な状況を確認することが大切です。
引渡しを行う場合には、鍵、通帳、重要書類、車の鍵など、対象となる財産を整理しておくと、その後のトラブルを防ぎやすくなります。
後順位の相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄するなどして相続財産を管理する人がいなくなった場合には、相続財産清算人の選任を検討することがあります。
現に占有がない場合の対応と記録の工夫
相続放棄をした人が相続財産を現に占有していない場合には、占有している場合とは対応が異なります。
例えば、故人の自宅について管理会社が鍵を保管しており、本人が自由に出入りできない場合などです。
ただし、後日「誰が管理していたのか」が問題にならないよう、現在の状況を記録しておくことは有効です。
例えば、鍵を保管していないことや立入権限がないことを関係者に伝え、そのやり取りをメールなどで保存しておく方法があります。
- 鍵や立入権限の有無を確認する
- 管理会社や関係者の連絡先を整理する
- 不占有であることを示すやり取りを保存する
- 相続財産を勝手に処分・整理しない
- 重要な連絡は日付入りで記録する
特に、相続放棄後に「念のため家の中を片付けておこう」と考えて、家財を処分したり持ち出したりするのは注意が必要です。必要性がある場合でも、まずは保存・管理のために必要な範囲なのかを確認しましょう。